賃貸管理会社の業務範囲|任せる仕事・別料金・大家の承認を整理

執筆・編集大家の管理見直し編集部公開日

賃貸管理会社に任せる範囲は、業務名だけでなく「会社が行う仕事」「大家が判断すること」「別に払う費用」に分けると確認しやすくなります。募集から退去まで対応するプランでも、工事代、募集に関する費用、夜間出動料などが月額管理料に含まれるとは限りません。

この記事では、区分マンションなど1戸を貸す大家を例に、6つの工程で役割分担を整理します。表は契約を確認するための例です。すべての管理会社に同じ業務や権限があるという意味ではなく、実際に任せる内容は契約書・業務仕様書・料金表で確定させます。

「管理込み」を分けて確認する

連絡を受ける人、状況を調べる人、費用を決める人、発注する人、施工する人は同じとは限りません。各工程の担当と承認条件を決め、大家が不在のときの対応まで書面で確認します。

目次

同じ「管理会社」でも、依頼する仕事が違う

相手・仕事主に確認する内容混同しやすい点
募集仲介を行う会社広告、内見、申込受付、賃貸借契約の手続入居後の修繕や入金管理まで引き受けるとは限らない
大家から管理を受託する会社入居者対応、維持保全、家賃等の管理などの契約範囲募集仲介や工事の実施が別会社になることがある
マンション管理組合から管理を受託する会社共用部分の管理、管理組合との連絡区分所有者が貸す部屋の入居者対応まで当然に含むわけではない
修繕工事を行う会社工事範囲、見積もり、施工、完了確認、保証管理会社が業者を手配しても、工事契約と責任の相手は別途確認が必要

国土交通省は、賃貸住宅管理業法上の管理業を、賃貸住宅の維持保全を行う業務、または維持保全と家賃等の金銭管理を併せて行う業務として説明しています。家賃等の金銭管理だけを行う事業は、この定義の管理業に該当しません。募集や契約手続を含めた日常の言い方と、法令上の業務範囲を区別して読みます。出典は国土交通省「管理業者の業務」です。

募集から退去まで、6工程の役割を確認する

「会社が実施」の欄は、委託するときに具体化したい仕事の例です。大家が残したい判断と、会社に任せたい判断を相談し、その合意を契約へ反映します。別料金の欄は、請求の有無と条件を確かめるために使ってください。

工程会社に依頼する仕事の例大家の判断・承認費用と残す記録
募集賃料提案、広告掲載、内見調整、反響報告募集条件、値下げ、追加広告や工事の実施仲介・広告等の料金を確認。募集条件と変更履歴を残す
賃貸借契約申込情報の確認、契約手続、鍵の引渡し入居申込への判断や契約条件について、会社の権限を定める契約関連の報酬と対象を確認。契約書・設備一覧・入居時の状態を保管
入金管理入金確認、送金、未入金の連絡、明細作成控除できる費用、支払猶予など個別合意の権限送金手数料・保証契約との違いを確認。入金と未収を分けた明細を残す
入居中の修繕受付、現地確認、見積取得、業者手配、完了報告工事内容・金額・負担区分を、契約で定めた条件に沿って承認工事実費と手配報酬を分ける。写真・見積・承認・完了記録を残す
退去解約受付、立会い、原状回復案の作成、精算手続工事発注や費用負担の協議について、必要な事前承認を定める立会い・精算等の報酬と工事代を確認。入退去時の比較資料と精算根拠を残す
緊急対応夜間受付、状況判断、応急手配、事後報告事前に無承認で対応できる条件と連絡手順を定める出動料・応急工事代・対象外を確認。受付から処置までの時刻と費用を残す

この区分を見て、大家が行う仕事が予想より多ければ、追加委託できるかを確認します。会社が行うと説明した仕事でも、通常の月額料金の対象か、都度料金か、別契約かを分けてください。金額の比較方法は管理委託料と追加費用の比較方法で確認できます。

修繕は「承認・発注・施工」を分けて決める

例えば給湯器が故障した場合、「修繕対応を任せる」という一言では、交換まで会社が決めるのか、大家が見積もりを承認するのかが分かりません。応急処置と交換工事を分け、通常時と緊急時で判断の順番を決めます。次の回答は役割の違いを示す架空例です。

説明の例判断できること・足りないこと追加確認先と待つ条件
「修繕はすべて対応します」受付・手配・工事費・承認の範囲が不明管理担当に作業の流れ、契約担当に費用と権限を確認。書面で区別できるまで契約を待つ
「写真と見積もりを送り、大家の承認後に発注します」通常時の発注手順は具体的。緊急時は未確認管理担当へ連絡がつかない場合と応急処置の条件を確認し、契約へ反映
「少額なら事前承認なしで実施します」少額の金額・単位・対象が決まっていない契約担当へ税込か、1件単位か、対象業務と報告時期を確認。上限と例外の合意まで保留
「緊急時は応急処置を行い、内容と費用を報告します」何を緊急と扱うか、通常工事へ移る手順が必要管理担当へ判断基準と連絡手順を確認。交換工事まで含む説明なら範囲を確定させる

金額の上限や回答期限に、すべての物件へ当てはまる一律の正解はありません。物件の設備、大家が連絡を取れる時間、放置した場合の被害を踏まえて決めます。少額の基準を置く場合も、それだけで緊急時のすべてを扱えるとは考えず、緊急条項との関係を確認してください。

国土交通省の賃貸住宅標準管理受託契約書では、立替費用の承諾に関する基準を第6条、承認を待つ余裕がない緊急業務と事後の書面通知を第11条で扱っています。これは標準契約の規定であり、自分の契約も同じとは限りません。該当する条項と特約を照合します。

修繕を任せるときの承認と実施の分担。通常は見積もりを大家が承認してから発注。緊急時は契約で定めた対応と事後報告を確認する。

大家が判断を残す場面と、会社へ任せる権限

管理を委託するときは、作業の担当に加えて、大家を代理して何を決められるかを確認します。説明があいまいなままでは、大家は「相談が来る」と思い、会社は「任されている」と考えることがあります。次のように具体的な場面で確かめると、契約上の範囲を整理できます。

場面具体的な取り決めの例追加で確認すること
募集条件を変える会社が変更案を提示し、大家の承認後に掲載内容を変更賃料だけでなく、無料期間や設備追加も承認対象か
更新の手続をする会社が期限を管理し、条件変更を大家へ相談して手続更新条件の決定者、更新手数料、入居者との合意記録
退去費用を精算する会社が根拠資料と負担案を提示し、必要な承認を得て協議不同意の場合の連絡先、専門家への相談と費用、精算の記録
未入金に対応する会社が確認・連絡を行い、保証会社への請求条件を確認立替払いの有無、請求期限、法的対応の担当と別費用
鍵を扱う保管場所、引渡し、紛失時の連絡、退去時の回収を決める誰が何本保管するか、交換費用、入室時の手続

これらは取り決めの例で、委託すれば、会社が大家を代理して何でも決められるという意味ではありません。標準管理受託契約書の第14条も、代理する業務と、事前に協議して承諾を求める業務を分けています。費用負担で争いがある場合など、法的判断が必要な対応は、会社が行う範囲と弁護士等へ相談する範囲を確認してください。

更新前に、未完了の修繕と相談を確認する

更新の案内を準備するときは、契約条件と併せて、入居中に受けた相談の対応状況も確認します。書類の手続が進んでいても、修繕の返答や日程調整が止まっていることがあるためです。次の表は、大家と管理会社が確認する項目の例です。

確認項目照合する記録未確認・未完了なら行うこと
更新予定と条件契約書、手続予定、条件変更の有無管理担当に、条件を決める人と入居者へ説明する人、費用、必要な手続を確認する
未完了の修繕受付日、見積、承認、発注、完了の記録どこで止まっているかを確認し、次の担当と回答予定日を決める
相談・苦情の履歴相談内容、会社の返答、その後の対応返答だけで完了扱いにしていないか、再度の相談や未回答がないかを確認する
連絡担当入居者窓口、大家への報告先、不在時の代行者担当交代後も記録を読めるか、誰が入居者へ経過を伝えるかを確認する
費用と承認工事費、手配料、大家の承認が必要な条件見積や承認を待つ案件を区別する。大家は内容と金額を確認し、技術的な判断は担当業者へ確かめる
説明と合意の記録提示した条件、入居者の回答、未合意の事項提案中の条件を合意済みとして扱わず、次の確認事項と担当を残す

確認を始める時期は、契約の種類や必要な手続、管理会社の予定に合わせて決めます。更新条件や通知の扱いに迷う場合は、契約書を示して管理会社や専門家へ確認してください。急を要する修繕は更新時期まで待たず、通常の緊急対応の手順で扱います。

退去理由は、分かった範囲を次の管理改善に使う

退去の連絡があったときは、管理会社が聞き取れた範囲で理由を確認します。理由の回答を無理に求めたり、私生活の事情まで詳しく集めたりする必要はありません。回答がない場合は「不明」と残し、大家や管理会社の推測と混ぜないようにします。

  1. 入居者から聞いた理由、修繕・連絡の記録、管理会社の見立てを分けて記録する。
  2. 管理対応への指摘があれば、受付から返答、手配、完了までの記録と照合する。理由を聞けていない退去を、管理への不満によるものと決めつけない。
  3. 返答の遅れや引継ぎ漏れなど、記録から確認できた課題について改善担当と次の確認日を決める。
  4. 次回の報告で改善の実施状況を確かめる。1件の退去理由だけで、管理全体の良し悪しや対策の効果を判断しない。

退去理由には転勤などの事情もあります。聞き取った内容と対応記録から、大家や管理会社が改善できる業務を見つけ、次の対応に生かします。国土交通省の管理業者向け案内でも、定期報告の事項として管理業務の実施状況や入居者からの苦情の発生・対応状況が挙げられています。上の表と手順は、その確認を日々の管理に使うための確認手順の一例です。

1戸を貸す場合は、共用部分の連絡経路も確認する

区分マンションでは、室内の設備と共用部分の設備で担当が分かれることがあります。漏水のように原因がまだ分からないときは、最初の受付先、管理組合側への連絡担当、調査費用をいったん負担する人を確認しておくと、連絡先を探し直す手間を減らせます。原因や最終的な負担者は調査前に決めつけないでください。

物件・対象追加で確認する仕事確認先
区分マンション1戸共用設備の不具合、管理規約、工事申請、管理組合への連絡賃貸管理の担当者と管理組合側の窓口
戸建て屋根・外壁・庭・敷地内設備の点検、近隣からの連絡管理担当者。点検範囲と訪問頻度を業務仕様書で確認
一棟共用部の清掃・点検、建物設備、法定点検等の手配範囲管理担当者と該当設備の点検事業者。法令上必要な点検は個別に確認

国土交通省の標準契約書は、一棟全体を対象とする様式として注意点が記載されています。1戸の委託へ参考にするときは、共用部まで自分の依頼範囲に含まれると読み替えず、対象住戸と対象設備を契約で特定します。

契約前に、説明と書類を照合する

照合する書類見るところ食い違った場合の行動
業務仕様書・契約書実施する仕事、頻度、対象設備、外注先と連絡窓口営業説明と異なる箇所を示し、契約担当へ範囲の確定を依頼
見積書・料金表月額報酬、都度報酬、工事実費、空室時、税込・税抜「込み」の説明と別料金が重なるなら、請求条件の回答を待つ
特約・承認ルール通常修繕の承認、緊急時、無承認対応の条件口頭合意だけなら書面化を依頼。合意できない間は契約を待つ
報告見本・送金条件入金、控除、未収金、苦情・修繕の対応状況送金明細だけで必要な状況が分かるかを確認し、足りない報告を相談
終了時の条項書類・金銭・鍵等の引継ぎ、未完了案件の扱い誰が何をいつ渡すかを確認。解約条件と併せて合意する

登録された賃貸住宅管理業者には、契約前の重要事項説明、契約時の書面交付、分別管理、定期報告などの義務があります。法令上の定期報告は少なくとも年1回ですが、それだけで大家が必要とする日々の報告が足りるとは限りません。送金の明細、修繕の都度連絡、定期報告を分けて、契約で頻度と内容を確認します。制度の説明は国土交通省の管理業者向け案内、説明項目は重要事項説明書の様式で確認できます。

任せたい仕事が足りないと分かったら

今の契約で対象外だった仕事は、追加委託の可否と費用を確認します。契約には含まれるのに実施状況が分からない仕事は、まず報告や関連書類を求めて状況を確かめます。契約対象外の仕事と、契約に含まれるのに未実施の仕事を分けると、料金の追加で解決するのか、改善依頼が必要なのかを判断しやすくなります。

改善依頼と会社変更のどちらに進むか迷う場合は管理会社を変更するかの判断方法を確認してください。必要な仕事を受けられない場合は、同じ業務条件で他社へ見積もりを依頼します。候補を探す窓口は賃貸管理の比較サービスにまとめています。

よくある質問

管理を任せれば、大家は何もしなくてよいですか

どこまで任せるかによりますが、契約条件や工事の承認、会社へ渡す物件情報の確認など、大家の判断が必要な場面は残ります。連絡できる時間と希望する承認方法を先に伝え、急ぎの案件で連絡がつかない場合の手順も決めておきます。

「24時間対応」なら、深夜でもすぐ来てもらえますか

電話の受付と現地への出動は別です。対象となる不具合、出動可能な地域と時間、費用、応急処置の範囲を確認してください。受付の表示だけで、到着時間や当日中の復旧が保証されるとは判断できません。

管理会社が業者に外注していたら問題ですか

外部の業者を使うことだけで問題とは言えません。会社が担う責任、外注する業務、請求元、不具合が残った場合の窓口を確認します。管理の委託と修繕工事の発注が別契約なら、それぞれの相手方と責任範囲を読んでください。

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